2022年9月、静岡県の幼稚園バスで痛ましい事故が起きました。同年12月、国土交通省から置き去り防止装置のガイドラインが公表され、今では多くの通園バスに装置が搭載されています。
私はそのガイドラインが制定された直後から「これじゃダメ。また事故が起きる。」と指摘しています。
本記事は、その続編となります。
国のガイドラインの盲点!→「切ったら誰も気づかない」
改めて今の国のガイドラインの装置を紹介します。
▼以下国土交通省HPの抜粋

国のガイドライン
- エンジンを切ると、車内で確認を促す警報が鳴る
- 車内最後部のボタンを押すと警報が止まる(運転手は必然的に後部まで歩き、車内を確認することになる)
- 一定時間ボタンが押されなければ、バスから大音量の警報を発して周囲に喚起
「一見万全なフロー」です。しかしこのフローだと、現場では「運転手が、装置の電源を毎日入り切りせざるを得ない。」という、とんでもない運用方法に変わってしまっていたのです。
なぜ運転手は装置を切るのか
誤解してほしくないのですが、運転手に悪意があるわけではありません。切る理由は、どれも日常の都合です。

運転手が安全装置を切る理由
- 夏休みの間にバッテリーが上がったら大変だから、切っておこう。
- ガソリンスタンドで爆音が出たら迷惑だ。今日は切っておこう。
- 車検に出すから、外しておこう。
- 停留所だ。近隣のためにエンジンを切らなければならない。だから今だけ装置を切っておこう。
どれも、真面目な人ほど考えそうなことばかりです。
しかし「切るな」という規律があっても、現場は切らざるをえない。これが現状なのです。
「切ったら戻さないといけない」しかしその事実を知る術(すべ)がない
ここが、私が一番伝えたい核心です。
通園バスの置き去り装置が付いているバスに、お子さんを乗せている保護者の方に質問です。
もちろんそれは国のガイドラインに準じたものです。
その装置、今日、爆音は鳴りませんでした。
実は、それ「単なる装置の電源の入れ忘れ」ってことはないですか?
答えられる保護者は、一人もいません。なぜなら運転手の自己申告以外の根拠がないからです。
つまり、保護者がどれだけ「ちゃんと動いてくれてるのかしら?」と知りたくても、それを確かめる術(すべ)が国のガイドラインではないのです。
本システムの大まかな概要
私が考案したシステムは、この「知る術(すべ)がない」を解決するものです。
運転手がエンジンを切ると
- 運転手がエンジンを切ると、職員室に第1の電波が飛ぶ
- 運転手が車内最後部の「後方確認ボタン」を押すと、第2の電波が飛ぶ →回転灯1が消灯。同時に保護者に「後方確認ボタンが押されました」のLINEが届く

ここまで読んで、大半の人はきっとこう思ったでしょう。
「これ、国のガイドラインとほとんど同じでは?」
一見そう思うのも無理はありません。
しかし決定的な違いが二つあります。
違い1. 警報を受け取るのが、職員室の職員
国のガイドラインの装置は、警報が鳴るのも、それを止めるのも、バスの中の運転手一人で完結します。
つまり、確認を怠っても(サボっても)、それを知るのは本人のみの性善説。

本システムでは、運転手が後方確認ボタンを押したか、押していないかが、そのまま職員室に届きます。回転灯が点き、押されなければ職員室で警報が鳴る。運転手の確認行動が、必ず複数の職員の目に触れるのです。ここに初めて「第三者による監視」という概念が生まれます。
違い2. 「知りたい」と思ってる保護者に届く
本システムには更なる第三者が存在します。それは保護者です。
運転手がエンジンを切ったこと、後方確認ボタンを押したことが、毎日、園の外の保護者にまで届きます。

そして届かない日があれば、待っている保護者は「あれ?」と気づきます。
この「あれ?」について、詳しくは後のほうで説明します。
本システムの技術的な側面
ここで本システムの技術的な説明を分かりやすく行います。

1. 運転手がエンジンをかけると、シガーソケットから給電
まずはエンジンステータス送信機。この装置は、わずか10秒で充電が満タンになります。
なぜなら電波を1回発信するだけで十分だからです。(後述)

2.運転手がエンジンを切ると、第一波の電波が発信
送迎を終え、エンジンを切ると、給電が絶たれ、コンデンサーの電荷が減り始めます。
装置はこの電荷の減少を検知し、残った電荷を振り絞って、一回だけ電波を発信します。
「バスが到着したよ」
→この電波を職員室に発信するだけで十分
この電波を受けた職員室で回転灯1が点き、保護者に「バスが到着しました」のLINEが届きます。
電気が潤沢な職員室だからこそ、カーバッテリーの容量、残量を気にしなくていいのです。
3.電波を車外に発信するから成立するフロー(特許取得)

フロー図の①〜⑤は、保護者のLINEにこのように届きます。
(イメージ)
4. 車内は完全電池レス
本システムにおいて、電波を発信する装置は完全に電池レス。
エンジンステータス送信機がシガーソケットから電気をもらうのは、エンジンをかけた直後の10秒だけです。電波を1回発信する分だけコンデンサーに蓄えたら、それで終わり。エンジンを切れば、一切消費しません。
「ずっと給電し続けたらバッテリーが上がるのでは?」
→上がりません。1回分の電波を出すだけの電気しか使わないからです。
↓押した力で発電して電波を発信する電池レスリモコン
・後方を確認したときに押す「後方確認ボタン」
・園児が自ら押す「緊急ボタン」
いずれも「押した力で発電」するので、電池交換は不要。

「明日から夏休みだ。バッテリー上がるとまずいから夏休みの間は切っちゃおう」
→こういったバッテリーが原因による「切っちゃおう」を完全に防ぐことができます。
電波到達距離は約50m、「切らなきゃ」が起こりえない
もう一つ。この電波は約50mしか飛びません。一見弱点のようですが、これはメリットでもあります。
ガソリンスタンドでも、車検場でも、エンジンを切ったからといって、前述の第一波が職員室に届かないため何も起こりません。

本システムに対してよくおこる批判について
本システムを説明すると、必ずこう言われます。
・「LINEを見ていればいいが、見落とすこともある。」
・「結局人間頼みであるのには変わりない。」
これについて説明致します。
「メール」って意味がないものでしょうか?
メールで例えると分かりやすいです。メールは届いても、自分から受信箱を見に行かなければ、読むことはできません。では「だからメールは意味がない」でしょうか。違うと思います。
大事なメールを待っている人は、何度でも受信箱を開きます。そしてメールが届いてなければ、「おかしいな」と気づきます。

本システムも同じです。全保護者が受動的に、運転手が装置を切ったことを知ることはできません。
しかし、少なくとも「今日も無事に着いたのか」を知りたいと思っている人は、それを知ることができます。
また届かない時点で、何らかの装置に異常が起きてることにも気づくのです。
私の長男の塾の話をします
小6の長男が通う塾には、生徒がカードをかざすカードリーダーがあります。
長男は「塾に到着したらかざす。」または「授業が終わったらかざす。」という習慣になっています。
かざすとメールが送信されるようになっています。
これによって「今塾に到着したな。」「今、授業が終わった。〇〇分ごろ帰宅するな。」と分かります。
なぜ見るか、親だからです。
メールなので、自分から能動的に確認しないといけません。それでもメールを待ちます。
確認しないで家でテレビをみていると、突然ずぶ濡れで「(ピンポン)ただいま!」「しまった!メールみてなかった!ごめん、ごめん!」ということもあります。
爆音は鳴りません、肩を叩いて耳元で教えてくれるわけではありません。
では、このシステムに意味がないかといえば、まったく違います。
国のガイドラインは「あれ?おかしい。」が存在しない!
このシステムは、保護者が100人いて、その日99人がLINEを見ていなくても、お母さんが一人「あれ、この時間になってもLINEが届かない。」と園に電話すれば、異常は発覚します。
それは故障であってもです。

故障に気づくことができることは非常に重要なことです。
一方、今の国のガイドラインの装置は、100人全員がどれだけ心配していても、誰一人、確かめる術(すべ)がありません。そうです。「あれ?おかしい。」のサインが存在しないのです。
本システムは遠足では使えない(認可外)
正直に書きます。本システムには、明確な限界が一つあります。
遠足などの課外行事では、機能しません。電波は職員室までの約50mしか飛ばないからです。
実際、この理由で国のガイドラインの要求を満たすことができませんでした。
ただ、あえて申し上げると、それが故に爆音が出ないため、「ガソリンスタンドだ。切っちゃおう」という習慣が起こらないのです。この「園外でも使えるように」という要求を無理に満たそうとすると、話は戻って、結局「今だけ切っちゃえ」が可能なシステム装置になってしまうのです。
まとめ
あの事故から4年が経ちました。
国のガイドラインの装置は、園によっては毎日入り切りされています。
国土交通省の方々には、現行のガイドラインが本当に十分なのか、いま一度検討していただきたいと思います。
二度と同じ事故が起きないように、技術者として願うばかりです。
