ホテルにお勤めの皆さん。特に上層部の皆さん。
お客様がチェックインして、スマホを使って客室の照明・空調・テレビなどを操作。
SFのような「スマートホテル」。
「QRでも操作できませんか?」というご相談、実はよく受けます。

ごもっともです。QRでチェックインのホテル、最近増えましたよね。
QRは磁気カードと違い、紙で発行できるし、コストも安い。
カードと違い「失くした!」「磁気が弱い!!」といった際のスタッフの対応の負担が少ないのは周知の事実です。
ならばそのQR画像を利用することで、客室のカードホルダーのカードを抜き差しするのと同じように、客室の照明・空調・テレビを一斉にオン/オフできたら便利そうに見えます。
しかしそのアイデア──
10,000%できません。
技術的には「できる」。でも、現実には“できない理由”があるんです。
QR関連の特許を取得している私の観点から、その「なぜできないのか?」を分かりやすく解説していきます。
QRで入室→照明・テレビ・空調をオン➡これ簡単
ホテルの外扉にQRリーダーを設置。お客様が入室時にかざすとドアが解錠され、照明・空調・テレビが一斉にON。

はい、これは技術的にも現実的にも「可能」です。
しかも、難しくもありません。
問題は外出時→律儀にQRをかざしてくれる人➡いません
ホテルとしてはやはり節電して欲しい。
カードホルダーの場合は「カードを抜く」という行為をすることで、電源が一斉に落ちます。
そうだ。「客室内にもQRリーダーを設けて、出るときにまたかざしてもらおう!」
……ナイスアイデア!! しかしそれには大きな落とし穴が・・・。
そもそもお客様が律儀に「さーて、節電のためQRをかざさなくちゃ」とQRをかざしてくれるでしょうか?

答えはもちろん「NO」。
忘れる・面倒・そもそもそんな操作したくない。スマホの充電もしておきたい。
結果、悲しいかな。誰も使いません(泣)。
しかも部屋の中と外の両方にリーダーが必要です。コストは単純に倍。
対策1 – QRをかざさないとドアが開かない機構
こうなったら意地でもお客様には、外出時には電源を落としてもらいましょう。
「部屋の内側にもQRリーダーを設置。それにQRをかざさないとドアが開かないようにしたら?」
→はい、それナイスアイデアです、技術的にも可能。でも非現実的です。
【最大の問題】
これ消防法で一発アウトです。
非常時は、電気が止まってても、煙が充満してても、ドアは開かないといけない。

対策2 – 人感センサーで人がいないと判断して落とす?
はい。それもいいアイデア。でもここまで読んだら現実的じゃないのは分かってきましたよね。
人感センサーで、一定時間動きがなければ照明や空調を一斉にOFF。これでめでたし!!

これも本末転倒。よーく想像して下さい。QRにする意味がなくなると思いませんか?
だって、ONもOFFもセンサーに任せてるから。
さらに最悪なのは──

→「トイレで〇んこをしているとき、しばらく考え事をしていると電気が落ちた、動くと復旧した!」
→ あれと同じ現象が、ホテルの全客室で頻発!!
お客様からのクレーム、想像できますよね?
対策3 – 外出時QRをかざさないと次入室できない
真面目に話しましょう。
カードホルダー方式の場合:
➡お客様は、退室時、一般的にはカードを抜いてくれます。なぜでしょうか?
➡それはカードを抜かないと入室できないから。結果節電成功。

残念ながらこれはQRには使えません!
QR方式だと?:
➡カードホルダーのように退室時QRをかざして電源を落とさないと、次回入室できないようにする。
➡技術的には可能、ナイスアイデア!
【これが使えない理由】
例えば家族3人で旅行。室内にはパパが1人でテレビを見ています。
その次にママが入室するには、パパが1度退出用QRをかざして電源を落とさないといけないから。なんとも不便!!

これを回避するには、個別にQRを発行して管理する方法もありますが、運用方法がどんどん複雑になります。
だから現状はカードホルダー方式が主流なんです。
まとめ – ホテルの上層部の皆さん
現場は「最新のIoT技術を取り入れてもらって、楽になりたい。」とは、それほど考えていません。
昔ながらのカードホルダーで、実は十分に機能しています。

カードの置き忘れや紛失が心配なら、再発行時に100円徴収。
これだけで、現場の負担も驚くほど減らせます。
無理にIoT化するよりも、
「カードホルダー+100円ルール」が、現場にとっても、お客様にとっても、一番合理化です。
ただ、こういったことを踏まえて
- 「カードホルダーの状態をiPadで一覧したい」
- 「各部屋の空調ON/OFFをiPadで確認・操作したい」
といったご要望がありましたら、その時は、ぜひ私たちグリーンワークスにご相談ください。